15.M&Aでの買収資金を調達する方法とは?
2018年10月28日
最近では事業承継でM&Aを選択する経営者の方が増えて来ました。
その他にも資金調達のために事業の一部を売却するケースもあります。
それらを買うために資金調達がしたいと言う相談が増えています。
それらの相談者の多くの勘違いが、買収先の企業が担保になる、所謂LBOが使えるのではと思って金融機関に相談してしまう事です。
LBOが使える買収は、少なくとも数億円以上の規模の取引で、数千万円掛けてデューデリジェンスを行う取引に限られると思って間違いありません。
つまり不動産であれば、路線価や課税標準額など国が決めた指標があるので金融機関は担保価値を簡単に計算する事ができますが、企業の担保価値にはそのような指標がないからです。
それで企業の担保価値を算出する為に個別の専門家に企業価値を査定してもらう、所謂デューデリジェンスを行う必要がある訳です。
ですから、数千万円クラスの買収に数千万円のデューデリジェンス費用を掛ける事はありませんから、専門家による担保価値を金融機関に示す事ができませんので、LBOは使えない事になります。
このことはABLによる資金調達にも似ています。
在庫を担保とするABLにも専門家の評価が必要になりますので、ある程度の規模がないと難しいので、その必要がない売掛債権担保ローンが主流になっている訳です。
話を戻しますが、数千万円クラスの買収資金の調達は買収側の財務内容によると言っても過言ではありません。
勿論、売却側の財務内容が良ければそれだけ審査にプラスになりますし、財務内容が悪い場合には審査にマイナスの影響があります。
そのあたりを増幅させたり軽減させるには、事業計画や買収計画などの作成の仕方が重要になります。
融資を引き出そうとバラ色の事業計画書を書く方が多いのですが、金融機関もそんなことは百も承知で、バラ色計画で融資が下りる事はありません。
そんなに簡単であれば、誰でも買収資金に困りません。
ではどのようにすれば買収資金が調達できるかと言いますと、当たり前の事ですが普段から財務内容の改善を行い、金融機関からの評価を高めておく事です。
多くの中小企業の経営者は、利益を出して税金を沢山払って、会社に出来るだけ利益を積み上げると言う事を嫌います。
利益が出れば、まずは節税で経費を増やし利益を減らそうとします。
ですから、利益の出ない会社に金融機関も大きな額を融資しません。
だっていつも節税して利益が無い会社が大きな金額を返せる訳ないじゃないですか。
買収のチャンスが来た時に慌てて資金調達に走っても、利益が50万円しかない会社に5000万円追加融資する金融機関はありません。
だって通常の運転資金ではありませんので、貸さなくても潰れない訳ですから・・。
それでも専門家であれば、調達できる手法を持っている場合があります。
でもやはり普段から財務改善を心がけている会社には勝てません。
M&Aで売却するときも同じで、2年~3年前から専門家に売却を前提とした財務改善を頼んで売却すれば、何もしないで売るよりも2倍~3倍で売れる事もある程、財務改善は重要です。
売るにしても買うにしても、自社の財務を強化をしておく事が将来を大きく変えるチャンスを掴むことに繋がります。
ただ、商品を開発したり仕入れて売るだけで、資金が足りなくなった時だけ慌てる経営では、会社は強くなりません。
例え、商品がヒットして大きくなっても、財務の土台が出来ていなければ、砂漠の砂上に建った城のようなもので簡単に崩れてしまいます。
財務強化は、成長のチャンスを逃しませんし、普段の資金繰りにも全く困らなくなります。