26.節税と借り過ぎが黒字倒産の原因に?
2019年2月8日
年商2000億円を超える自動車部品メーカーの曙ブレーキ工業(東証1部上場)が事業再生ADRを申請したと言うニュースを見た方もいらっしゃると思います。
上手く行かなければ倒産です。
彼らが倒産すれば、借り過ぎが原因の黒字倒産にあたると思います。
これは中小企業でも同じです。
借り過ぎれば、債務償還年数に引っ掛かってしまいます。
つまり、黒字であっても利益(純利益+減価償却費)で返済する訳ですから、完済するまでに20年も30年も掛かる程度の利益しか無ければ、これ以上の融資は出せないとなる訳です。
しかしながら、多くの中小企業の経営者の頭の中には、事業を伸ばしたり建て直すために必要な資金をどうやって借りるかしかありません。
自社が貸せない状況になっていることなどお構いなしで、捕らぬ狸の皮算用だけで銀行と交渉したって上手く行く訳がありません。
せめて、経営改善計画書を書いて持って行くぐらいの配慮が必要です。
しかしながら、そのように申し上げると「分かりました。何とか作成して見ます。」とおっしゃる経営者の方があまりにも多いから驚いてしまいます。
金融機関が納得する経営改善計画書を財務知識の乏しい経営者の方が書くのは至難の業だからです。
BS(貸借対照表)の5年分予想値なども必要になったりするからです。
通常、PL(損益計算書)の予想は黒字で出しますから、BSの改善がどこまで進むかを金融機関が理解しやすいように書かれた経営改善計画書を出さないと怖くて支援できない訳です。
融資の審査の重要な部分の多くはBSにあるからです。
つまり、PLが黒字予想ならBSがどこまで改善されるかと言う予想がなければ経営改善計画の意味がありません。
それに比べますと、事業計画書はBSに然程損傷がない状態にある会社用なので、将来の収支予想と資金繰りの予想程度でも金融機関は審査が可能になる訳です。
ですから、事業計画書であれば経理財務を少し勉強している経営者であれば、何とか書けると思います。
つまり、事業計画書を提出すれば借りられるレベルは、病気で言えば診察を受けて正しい薬を飲めば治りますと言うレベルです。
しかしながら、経営改善計画書を出さないと借りられないレベルは、手術を受けないと治りませんと言うレベルであるにも関わらず、自分で手術しますと言うので驚く訳です。
もう一つの黒字倒産の原因となり得るのが過度の節税です。
試算表でかなりの利益が出ると予想されているのが、決算になると途端に利益を減らして税金を安くする節税と言うやつです。
試算表で融資を実行した金融機関が決算書を見て騙されたと思ってしまいます。
これを何度も繰り返す経営者がいますが、決して何度も成功する訳ではありません。
直ぐに貸出しが止まるだけの話です。
試算表よりも決算書の方が重視されますので、節税して利益が減ればやはり債務償還年数が増えてしまいます。
債務償還年数が一定レベルを超えるとやはり融資も止まってしまいます。
節税して利益を減らし続ければ、当然会社の内部保留は増えませんから、自己資本比率も上がりません。
その体力がない会社に融資が止まったら、厳しくなるのは当然だと言えます。
経営者の多くが出て行くお金は何でも減らせば手元に残るお金が増えると考え、税金も経費と同じように考えて減らす努力してしまう訳です。
しかし、事業はそんな単純な物ではありません。
先行投資をしなければ成長できない場合には、税金より融資の方が重要になります。
何故ならば、節税した金額程度では先行投資を賄えない場合が殆どだからです。
それならば、節税を止めて利益を出して、融資額を増やした方が会社は成長し、利益の絶対額は増えるのです。