29.中小企業を高く売るためには?
2019年3月2日
中小企業を売却する時に、大手M&A仲介会社に売却を頼んだ方が売り先を沢山抱えており、マッチングが上手く行くと考えている方が結構います。
しかしながら、着手金だけ払って2年経っても売り先が見つからないと言うのが実態です。
そもそも中小企業を買う大手企業がいるのでしょうか?
大手企業は2000万円~3000万円掛るデューデリを行わずに買収する事はあり得ません。
では、5000万円の中小企業の買収にそれだけのデューデリ費用を掛けた上に、更に仲介手数料の2000万円を払う価値がある中小企業があるのでしょうか?
非現実的だと言わざるを得ません。
では、中小企業に買ってもらえばと思うかも知れません。
仮に中小企業が買手となる場合には、費用の掛かるデューデリは省いたとしても仲介手数料は払わなくてはなりませんから、7000万円必要になります。
更に買収先に借入が例えば2000万円あれば、大概の場合は一旦返済する必要が出てきます。
勿論、買収側のメインバンクに事前相談して借換えに応じてもらえれば負担はありません。
しかしながら、デューデリを省いて購入すれば、買収後に問題が発生する可能性があり、仲介会社とトラブルになるため、大手仲介会社は買手として中小企業を紹介したがりません。
更に言えば、デューデリを行わない買収先はリスクが潜んでいるので担保価値はありませんので、金融機関からの融資は、買収会社の財務内容次第となってしまいます。
中小企業の買収先は7000万円が準備できずに途中で買収を断念する事も珍しくありません。
このような事情の中で、M&A仲介会社では中小企業をトラブルなく売却する事が決して簡単ではない事を覚えておいて頂ければと思います。
それで中小企業を高く売るには、色々な事に配慮しなければならりません。
表面的に高くても、後で裁判になり損害賠償を要求されれば高く売った意味がなくなります。
また、高く買う相手を探し続けて、2年経っても買収の話が1件もなく、いつ売れるか分からないと言うのも意味がありません。
では、どうすれば問題なく高く売れるのかと言いますと、仮にEBITDAが1000万円の会社が5000万円の価値があるとすれば、EBITDAを2000万円に引き上げれば1億円の価値があることになります。
この1億円の価値がある会社を5000万円で売れば買収側は、デューデリ費用と仲介手数料を払っても合う訳です。
これならば大手企業も買収先の候補として参加する事ができます。
勿論、規模が小さいと言う事で買収を希望する会社は多くはありませんが、採算が合わないと言う理由は無くなった訳です。
でも、それなら安く売る事になるのではと思うかも知れません。
高く売るためには利益を出すと言う考え方は弊社では取りませんので、EBITDAが1000万円上がれば、役員報酬も1000万円上げます。
そうすれば3年すれば3000万円を先取りする事になります。
更に、事業譲渡で売れば株式で売るより高く売れますので、そこでも差益を得る事ができます。
事業譲渡もケースバイケースですが、株式売却より4割も高く売れたケースもあります。
勿論、株式で売るより税制の問題はありますが、年収を上げて退職金で受け取れるようにすれば、大きなそん色はありません。
それに何よりも大手の買手にデューデリして売却すれば、後々問題になる事もありませんし、何よりも従業員から反対される事がなくなります。
個々に設計が必要になりますので、こんな簡単な事ではありませんが、中小企業を安全かつ高く売るには、マッチングだけのM&A仲介会社では難しいと思います。
役員報酬を上げて利益の減った決算書を仲介会社に持ち込めば、格好の値引き材料にしかならないからです。
それに仲介会社は仲介が仕事であり、高く売るための財務改善は専門外なのです。
M&A仲介会社は、買収をして仲介手数料を何度も払ってくれる買手と売却すれば終わりと言う売手のどちらの味方になるかは経営者ならば想像が付くと思います。